「ら・むうんさん、怪談やってよ」 四谷於岩稲荷田宮神社の禰宜でらっしゃる栗岩さんが、にこやかな笑顔でこうおっしゃってから、 早いものでもう丸六年が経ちました。 若い人たちに向けて、正しく畏怖や畏敬を育てられる作品を。 『なぞらえ屋』は、そういった背景から望まれて生まれたお話です。 昨年、二本目の『なぞらえ屋〜不思議底七歌〜』は、震災の直後に自粛の相次ぐ中、 悩んだ末に上演して大入り満員を頂きました。 その時、自分たちは語り継いでいく事の大切さを痛感いたしました。 フィクションが簡単に負けてしまうような恐ろしい現実を越え、なお自分たちが語り残せるものは 何だろう。 五里夢中の中、自分たちの前に聳え立ったのは岩戸でした。 震災直後、キャスト・スタッフを集め、その背中を押すために引用したのが、天照の岩戸隠れ だったからです。 それは、真っ暗になってしまった世界に光を取り戻す為の、日本で最古のエンターティメント だったんだよ、君たち表現者は、みんなウズメの末裔なんだよと。 未来が明るいものだとは誰も保障は出来ません。 でも、暗い世界に希望の光を見出すこともあるはずです。 エンターティメントは、どんな時代にも必要だと。 『なぞらえ屋』の三作目は、岩戸に挑み岩戸に託し語ります。 |
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平成二十三年四月 有里紅良 | |||||